てんしのひとみ | Best Production | ||
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2. | 心の延長としての言葉遣い | |||||||
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3. | 言葉遣いの心構え | |||||||
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4. | 言葉遣いの尺度 | |||||||
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1.相手は聴き手ではない |
話は話し手と聴き手の間で交わされます。このことは一応誰でも知っています。ところが私たちは、目の前に物理的に誰かがいれば、それが聴き手だと誤解してしまいます。それはあくまで相手と言うべきで、聴き手ではありません。
聴き手とは、話し手の話に耳を傾けて、その話を聴き取ろうとしている人のことを言います。相手が意識的に耳を傾けたときに初めて、話しは成立するのです。聴こうとしない人に話してみても、話さなかったのと同じことであって、一種の発声練習のようなものです。これではどんなに一生懸命話しても通じません。
これでは、人間の聴覚の機能を考えてもすぐ分かることです。私たちは外界から多くの音の刺激を受けているのですが、聴こうとする音しか入ってこないように出来ているのです。
話し手には最初、相手を聴き手にする仕事が課せられていることを忘れてはなりません。
2.話し手は発言権を持っている |
話す以上、そこに話すべき目的があるから、人は言葉を発しているわけです。その目的が達せられたとき、話しの効果があがったと言います。そのような意味で、話しというのは目的を達する、つまり、効果をあげるためにこそなされなければならないと言うことです。効果があがらない、または、逆効果になるようだったら、結果論ですが、話さなかったほうがよかったと言うことになります。
話しの目的というのは、大きく分けて、次の8つになります。その目的に応じた話しの機能(作用、働き)があるのです。その機能を生かした話し方をしないと効果は期待できません。
それへの強い期待こそ話し方、言葉遣いへの努力と言うことになるのです。【 】内がそれぞれの目的に対応した機能と言うことになります。自動車の機能を考えてみると、これがよく分かります。動かそうと思ったらアクセルを踏みます。停止させようとするのであればブレーキを踏みます。あの関係と全く同じです。
1. | 知らせる | ・・・・・ | 【報告】 | |
2. | 分からせる | ・・・・・ | 【説明】 | |
3. | させる | ・・・・・ | 【説得】 | |
4. | 改めさせる | ・・・・・ | 【忠告】 | |
5. | 感じさせる | ・・・・・ | 【共感】 | |
6. | ほめる | ・・・・・ | 【賞賛】 | |
7. | 人間関係のきっかけを作る | ・・・・・ | 【挨拶・返事】 | |
8. | 人間関係を深める | ・・・・・ | 【日常会話】 |
この広い意味の目的の中にも、その時々に応じた狭い目的があります。例えば、させる(説得)にも、「この書類を専務に届けてこい」と言うこともあれば、「空気が濁ってきたので、その窓を開けてくれ」と言うこともあります。この狭い意味の目的を「特定目的」と言います。
いずれにしても、話すときは、話し手の側で、なんのために話すのか、なんのために話しているのか、なんのために話したのかをしっかり意識して話すことが必要です。話し手はそのような意味で、自由な発言権を持っていると考えてよいでしょう。その目的を達するようにという以上、これを強く意識して話す必要があるというのは当然のことです。
3.話しの効果は聴き手が決める |
話しが成立し、目的を意識して話したとしても、それですぐ効果があがるかというと、必ずしもそうではありません。話し手は、何を話してもよろしいという発言権は持っていますが、話しの効果を決める決定権は聴き手が握っているからです。相手がどう受け止めるかと言うことを意識しないで、自分勝手に話していたら、効果があがらないばかりか、逆効果をきたしてしまうことになります。誠実な人が嫌われ、事実を話していながら誤解されるのは、このことが原因しているのです。だからといって、自分の目的まで変えてしまうのでは話す意味がありません。話す目的はあくまで話し手が主体ですが、話し方、言葉遣いは聴き手が主体になるということを忘れないで頂きたいのです。
コミュニケーションの手段は表情や態度、服装、場、ジェスチャーなど、いわゆる非言語的な手段もありますが、その中心になるのは言葉です。同じことを話すのでも感じの良い言葉で話すこと、また、話す意図にあった共通の意味にとられる正確な言葉を使うということ、そして、わかりやすい言葉を選んで話すということです。感じよく、正しく、わかりやすく、この3つを「表現の原則」と名付けていいでしょう。
1.心と言葉 |
敵対している者同士ならともかく、この世の中では、最初から大上段に振りかざした出会いなんてありません。些細なことからいろいろなトラブルが起こります。
出てきた言葉自体が聴き手の尺度に合わないと言うこともありますが、それ以上に、相手はその言葉を選択した人の奥にある心を問題にするのです。「あのようなことを言うのだったら、あの人は、私をそう見ているんだなあ」と言うことになるわけです。
逆に言えば、出てきた言葉や話し方を通して、相手は話し手の心のあり方をはかっていると言うことになるのです。話すというのは、現象として出てくる言葉そのものと、その奥にある話し手の心と両面が問われると言うことになるのです。多くの場合、言葉と心は連動しているからです。
2.話しの味は人の味 |
話すときほとんどの場合、相手に対する配慮の足りなさや、努力の不十分さのために悪い言葉で話したのだろうと相手は受けとるものだ。と考えたら間違いないでしょう。だから、言葉の慣習になれるということも、結果として相手に対する配慮であり、温かい心配りであると考えるべきです。
世間ではよく、「心さえよければ」とか、「誠実であれば言葉はどうでもよいじゃないか」などと気楽に言う人がいます。心がよければ相手を不愉快にしたり、傷つけてよいと言うことにならないのです。実際問題として、ほんとうに心がよければ、出てくる現象としての言葉も良いはずです。また、誠実の固まりみたいな人なんてこの世にはいません。一歩ゆずって私はあえて言いたい。「心も言葉も両方ともよいほうがずっとよいのだ」と。ほんとうの誠実というのは、心と同時に外へ出てくる現象としての言葉まで含めて、包括的に捉えるべきです。言葉は精神の脈拍なのです。少なくとも相手はそう受け止めるのです。
1.接遇語としての言葉遣い |
私たちは、人間関係の度合いによって言葉遣いを変えています。つまり、話す相手や話題になっている人に応じて同じことを話すにしましても違う言葉を使っています。
このように、話す対称、話されている内容や場面に応じて使い分けている言葉を待遇語といいます。人間関係の差を埋める対等語、調和語と言ってもよいでしょう。待遇語としての言葉遣いも、長い歴史の中で一定の形ができあがっています。自分勝手な言葉を使っていいということにならないので、言葉遣いはなかなか難しいと言うことになるのでしょう。
相手との差に応じた言葉遣いによって、人間関係を調和させ、対話を滑らかにするのが敬語です。敬語は話し手と聴き手、話しの中に出てくる人との、モロモロの差を埋める働きを持つ調和語でもあります。
2.対等の心構えが基本 |
話すときの基本的な心構えとして、話し手と聴き手とがともに対等であるという基盤があって、初めて本来の対話が成り立ちます。しかし、実際問題として、私たちは、お互いの間にさまざまな差のある人たちと生活を共にしています。年齢の差、職制上の差、先輩、後輩の差、優劣の差、親疎の差などです。これを無視して話すと、相互の人間関係に摩擦を引き起こしたり、ヒビを入れることになります。
この差を埋める待遇語としての敬語が適切に使われていれば、相手に社会性豊かな教養の深さを感じさせ、安心感を持たせることができます。勢い、お互いの間の差が埋まることになります。適切な敬語が使えると、対話がスムーズに進み、人間関係の発展に役立つことになります。だから、対話においては、相手にあった敬語を使いこなす能力が必要になるのです。そのためには、先ず正しい言葉遣い、敬語を知らなければなりません。知ることは改善することの最初です。
言葉は慣習に従いますので、どこでも絶対正しいというものはありません。でも、一つの言語領域の中で、長い歴史を通して一定の形ができあがっています。この慣習に従った言葉を選択する気配りがいるのです。
言葉の実務上の意味は、辞書に鎮座しているものだけではありません。言葉の意味も、話し方もと気とともに変わり、場所とともに変わります。しかし、ある時期定着した言葉は、そうめまぐるしく変わるものではありませんので、その時々において、どんな言葉が一番適当かと言うことはあります。また、慣習に従えば、一応相手に失礼にならないですみます。私たちは、良識ある社会人としてこの平均的な言葉遣いを身につける必要があります。
1.言葉は時とともに変わる |
お若い方は意外に思うでしょうが、メガネに色の付いたのは、昔、色眼鏡といって、普通の社会人は使いませんでした。ヤクザの世界やその関係者と思われていた時代があったのです。いまはサングラスとしゃれて言います。薄い色の付いたメガネは多くの人が使っています。世の中の必要に応じて、言葉自体が変わっていきます。チョッキをベストと言い、ジャンパーをブルゾンと言うでしょう。その時代にあったというべきか、受ける人に合った言葉遣いにしなければ通じないこともあります。
2.言葉は場所によっても変わる |
外国語や方言など極端な言葉もありますが、同じ日本語でも、その地域によって意味が違うこともあります。関西から西の方の地域では「なおす」という言葉の意味に、「片づけること」「しまうこと」を示す場合がたいへん多いのですが、関東系では、ある一部の人、地域でしか、その意味では使いません。「あらためる、改善する、修理する」と言うときに使います。
話しというのは、話し手の話した言葉の意味内容と、聴き手の受け止める意味内容が一致すればよいわけです。だからその地域で使われている方言など、特別の状況でない限り、私は大いに使ってよいという立場をとっています。ただ、相手によって使い分けができるようにするためには、普段から、平均的言葉が使えるようにしておかなければならないと言うことでもあります。
言葉は場所によっても、相手の受けとる意味が違うこともあるので油断しないようにしなければなりません。
3.言葉は人間関係によって変わる |
多くの人との関わりの中で生きている現代人にとって、一応、社会一般に通用する平均的な言葉遣いを知り、正しい敬語を使いこなせるように身につけることは、好意的な人間関係を作り、快適な社会生活を送るために不可欠の要件となります。
私たちは、自分との間のさまざまな差のある人たちと生活を共有しています。年配者、上司、顧客、あまり親しくしていない人、初対面の人など、話しの対称はさまざまです。相手との関係を無視して、仲間に話しているときと同じ言葉で話していたら「そんな仲じゃないぞ」となったり、「失礼な口をきくな」となってしまいます。相手は、このようなときにはこのような言葉遣いをして欲しい、という要求を無意識のうちに突きつけているからです。それに合わないと違和感を持たせ、話しの効果があがるどころか、人間関係はガラガラッと崩れ去ってしまいます。言葉の誤解は途方もない方向に発展してしまうので、たいへん怖いものです。油断してはいけません。言葉は人間関係によって変わると言うことを銘記しておかなければなりません。
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